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https://digital.asahi.com/articles/ASN654RWDN61OIPE01P.html

藤井ファンは大忙し？棋聖、王位に近づく藤井七段

杉本昌隆八段の「棋道愛楽」
手枷足枷（てかせあしかせ）のように人々の生活を縛る新型コロナウイルスの影響。しかし止（や）まない雨も、明けない夜もありません。
緊急事態宣言が解除され、近くの幼稚園や小学校からは、再び子どもたちの声が聞こえてくるようになりました。将棋界も将棋道場やイベントなどが段階的に再開。まずは少人数からだとしても、これは大きな一歩です。
私は4月の大阪対局以来、研究会もネット対局に切りかえてずっと自宅で過ごす日々。交通機関も2カ月間1回も乗っていませんでした。6月より、将棋会館から遠方に住む棋士の対局が行われることになり、「仕事」を再開できるありがたさを実感しています。
勝率の高い棋士の宿命ですが、藤井聡太七段の6月の対局日程は超過密になりそうです。
まずは棋聖戦。このコラムを書いている時点で、挑戦者まであと1勝です。実現すれば最年少記録の達成。結果はすでに出ているはずですが、それがどうであれ、藤井七段は今まで以上に世間の大きな注目を集めていることでしょう。
高校3年生の藤井七段。人との研究会は元々他の棋士より少ない方なので、自粛期間も研究に関して影響は少なかったのでは、と私はみます。学校も休みの間、自宅でAIも活用して十分な研究をしていたはず。どれだけ成長しているかを楽しみにしているファンも多いことでしょう。
タイトル戦も始まります。延期されていた第78期名人戦七番勝負・豊島将之名人と、挑戦者・渡辺明三冠との対局は6月10日、三重県鳥羽市で第一局がスタート。元々は4月に予定されていた第一局。延期期間の両者の調整にも注目です。
なお、この対局の立ち合いは福崎文吾九段、副立ち合いは澤田真吾六段と私です。
新しい生活による新しい発見。私にとっては、学生の弟子や女流棋士とのオンライン研究会がそれでした。
人が集まれないゆえの苦肉の策でしたが、その便利さやメリットを再認識。新しい勉強として、今後も不定期的に行う予定です。
唯一、不満があるとすれば、今まで必ず設けていたおやつの時間。若い弟子たちとのコミュニケーションの一つでしたが、これは実際に会っていないとやりにくい。
「今日のおやつは甘いものを食べるように」
ネット研究会にオンラインおやつの時間を導入しなければいけないか考え中です。
日頃の練習も本番があってこそ。王位戦も挑戦者まであと2勝と迫る藤井七段。師弟対決の竜王戦・3組ランキング戦決勝対局は6月の後半には行われそうです。そして第79期名人戦順位戦B級2組の初戦もいよいよ始まります。
将棋、そして藤井ファンには大忙しの6月かも知れません。私も当事者の一人として、再開後の良い将棋を心掛けます。
◇
〈すぎもと・まさたか〉1968年、名古屋市生まれ。90年に四段に昇段し、2019年2月に八段。第20回朝日オープン将棋選手権準優勝。藤井聡太七段の師匠でもある。
※藤井聡太七段は4日に棋聖戦の挑戦者に決まりました。

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