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「性神信仰」の歴史をひもとく　多様性の体現「かなまら祭」　川崎市在住・三橋順子さん講演：東京新聞 TOKYO Web
https://www.tokyo-np.co.jp/article/281051

若宮八幡宮金山神社（川崎市川崎区）の例祭「かなまら祭」の歴史をひもときながら、時代による性のとらえ方について考えることをテーマに、市内在住の性社会文化史研究者、三橋順子さん（68）が、同市高津区の市男女共同参画センター（すくらむ21）で講演した。三橋さんは同祭について、「多様性を尊重する川崎市にふさわしい祭礼」と語った。（竹谷直子）

同祭は、毎年4月に行われ、性病よけや子孫繁栄を願う祭り。男性器をかたどった神輿（みこし）が練り歩き、近年は外国人観光客から人気を集めている。衰退した「性神（せいじん）信仰」を復興したいと、先々代宮司の故・中村博彦さんが1977年に復興した。

性神信仰について、「乳幼児の死亡率が高い時代、農村での祭祀（さいし）の基本形は、農耕祭祀と性神信仰が結びついていた」と三橋さん。しかし明治維新以後、キリスト教や儒教に基づき、男女の別を説く性規範が庶民層にも求められるようになり、セクシュアリティの規制が急激に厳しくなったという。「とりわけ、性神信仰は『みだらだ』とされ、弾圧の対象となった」

同祭の3基ある神輿のうちの1基は、東京・神田にあった女装クラブ「エリザベス会館」と連携し、中村さんが導入した。同神社は80年代には女装者を祭礼に受け入れたほか、98年にはゲイカップルの神前挙式を開いた。三橋さんはこれらのエピソードや、中村さんが生前「性の多様化」について発言していたことなどに触れ、「先進的ですごいこと」と評価。かなまら祭について、「性的多様性と文化的多様性の両方を併せ持つ祭りで、これからも盛り上げていってほしい」と述べた。

三橋さんはトランスジェンダーで、研究者として明治大などでセクシュアリティの歴史などについて講義してきた。講演会は、LGBTQの当事者や家族、地域のサポーターでつくる「なないろほたる」とすくらむ21の協働事業。市民ら約30人が参加した。